研究企画「監督と興行収入」~クリストファー・ノーラン~
「映画は誰のもの?・・・監督のものだ!」
という勝手な定義のもとに、直近10年間(2008年~2018年)において有名監督の制作した映画の興行収入がどんな感じになっているのかを検証していこうと思います。
第2回目は「IMAXカメラ破壊王」「病院作って即爆破するクレイジー・ガイ」などの色んな異名を持つ男、クリストファー・ノーランを取り上げたいと思います。
とりあえずこの研究のルールは以下の4点です。
・プロデュースした映画は含まず、純粋に監督した映画のみを対象とする
・直近10年間(2008年~2018年)で公開~公開終了した映画のみを対象とする
・製作費などのデータが取得出来ない映画は対象外とする
・製作会社に入ってくるお金は興行収入の25%とする(つまりリクープには製作費の4倍の興行収入が必要)
ではデータを見ていきましょう。
公開映画
2008年「ダークナイト」
2010年「インセプション」
2012年「ダークナイト・ライジング」
2014年「インターステラー」
2017年「ダンケルク」
製作費合計:860億円
興行収入合計:4,122億円
製作会社の売上(興行収入÷4):1,030億円
製作会社の損益:170億円
平均製作費:172億円
平均興行収入:824億円
平均損益率:+20%
平均劇場数:4,027館
1館あたりの平均興行収入(動員力):2,047万円
詳しいデータはこちら↓
クリストファー・ノーラン - Google スプレッドシート
2008年の大傑作「ダークナイト」に始まり今の今まで、ノーランは常に製作会社に利益をもたらし続けていることがわかります。
特筆すべきはその「動員力」で1館あたり平均2,047万円の興行収入を稼いでおり、この企画の第1回目で取り上げた「スピルバーグの直近10年間の動員力(1館あたり1,045万円)」のほぼ2倍近い数値を叩き出しています。
加えて平均劇場数が4,000館を超えていることから、配給側もノーランに多大な期待をかけていることが伺い知れます。
現状で既にハッピーな状態のノーラン映画ですが、動員力を基準とした劇場数と製作費の関係は以下のようになります。
これによると、
製作費が51億円の映画→1,000館体制
製作費が102億円の映画→2,000館体制
製作費が153億円の映画→3,000館体制
製作費が204億円の映画→4,000館体制
ということになります。
現状では4,000館体制が当たり前となっているノーラン映画なので、上記の計算に基づくと製作費を204億円渡してもリクープが見込めるということになります。
とは言うものの、直近10年間では既に1本あたり平均172億円もの予算をもらってはいるのでこれが204億円に増えたところであんまり差がないような気もします。
IMAXカメラの酷使に少し抵抗がなくなるくらいにはなると思いますが、そもそも壊すなという話ではあります。
個人的には「メメント」みたいな5億円~10億円くらいのノーランの低予算映画が観てみたいと思っています。
「低予算でどんな内容の映画が作れるのか」というのも観たい理由の一つなのですが、興行収入をウォッチしている身からすると
「低予算 × ノーラン映画の動員力 × 4,000館体制」
が組み合わさった時に一体どんな投下資本利益率が達成されるのか、ということの方により興味があります。
ちなみに「メメント」は製作費9億円に対して興行収入が39億円だったので利益は出ましたが、「驚異的な利益率」という訳ではなかったようです。
公開館数も531館で現在の約4分の1で、動員力も当時は1館あたり734万円と現在の約3分の1でした。
次回作は「007」だなんだとウワサされており、ハリウッドの映画会社も大予算を渡すつもりマンマンな感じが漂っている今日この頃なので、何か特別な理由でもない限りは低予算映画の実現可能性は逆にかなり低いと思われます。
けど驚異的な投下資本利益率を観てみたいので、ブラムハウスあたりと組んでホラーでもスリラーでもサスペンスでも何でもいいから作ってほしいです。むしろブラムハウスと組んでくれ!お願いだノーラン!
最後に「当時世界に数台しかなかったIMAXカメラを破壊」「病院作って即爆破」などの数々の伝説を生み出した代表作「ダークナイト」のリンクを貼っておきますので、もし観ていなかったら是非一度観てみて下さい。ヒース・レジャーが命を懸けたことも相まって何というか「ドスーン」と来ます。
余談ですがIMAXカメラは一台5,000万円くらいするそうです。