ムービー興行収入ウォッチメン

国内外の映画の興行収入を勝手に見守り、必要とあらば勝手にお節介を焼いて応援するブログです。初めて来られた方は「はじめに」というカテゴリの用語説明を見てもらえると有難いです。

祝!配信開始記念企画!「スリー・ビルボード」の興行収入

この企画は「管理人が劇場で鑑賞して、個人的にものすごく気に入った映画」の動画配信を記念してその興行収入を振り返ると共に、配信やDVD・ブルーレイでの売上に貢献することによって、製作した人たちに「更なる利益」や「興行で足りなかった分の足し」という形で感謝の意を表そうとするものです。

第二回は本年度のアカデミー賞などの主要映画賞レースで「シェイプ・オブ・ウォーター」との激しいバトルを繰り広げた大傑作「スリー・ビルボード」を取り上げます。

 

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★基礎データ

製作費(推定):15億円

リクープする興行収入(=製作費×4):60億円

 

公開初週末の興行収入:4億4,000万円

予想興行収入(=公開初週末の興行収入÷12%):36億円

予想利益率:-39%

 

現在の興行収入:158億円

日本での興行収入:1億6,000万円(2月11日時点のデータ)

製作会社の推定利益:24億円

 

公開日数:175日

 

公開初週末の興行収入はかなりヤバかったですが「シェイプ・オブ・ウォーター」と同じく猛烈な追い上げを見せて、結果的にはかなりのリターンを叩き出しています。

日本での興行収入はなんとも言えない感じですが、世界的に見ればわりかしヒットしているような感じです。

なんにせよ製作会社のフォックス・サーチライトは同じく製作を担当した「シェイプ・オブ・ウォーター」と合わせて、興行的にも批評的にも非常に優れた成果を挙げた作品を2本ほぼ同時期にリリース出来ているので、ウハウハに違いありません。

 

ところでアカデミー賞の前哨戦と言われるゴールデングローブ賞では「作品賞(ドラマ部門)」「脚本賞」「主演女優賞(ドラマ部門)」「助演男優賞」の4部門を受賞し、「アカデミー主演女優賞助演男優賞脚本賞はほぼ確実」と言われていた本作。

そして迎えたアカデミー賞では、「強烈過ぎるお母さん」を演じて圧倒的な存在感を見せたフランシス・マクドーマンドが「主演女優賞」を当たり前のように受賞し、「愛すべきクソ野郎、ディクソン」を演じたサム・ロックウェルが下馬評通りに「助演男優賞」を受賞しました。

しかし期待されていた「脚本賞」はサプライズで「ゲット・アウト」に、「作品賞」と「監督賞」も一番の対抗馬だった「シェイプ・オブ・ウォーター」に持っていかれてしまいました。

 

そういう意味では何だか「色々と持っていかれた感」が強い本作ですが、内容はありとあらゆる点がめちゃくちゃ面白いです。

アカデミー脚本賞は「ゲット・アウト」が持っていきましたが、本作の脚本も練りに練り込まれていて本当に良く出来ています。

簡単には言葉にし辛いのですが、とにかく「見始めた時にそれぞれの登場人物に対して抱いていた印象」と「見終わった時にそれぞれの登場人物に対して抱いた印象」がガラッと変わっていることに気付いて愕然としました。

これは一体なんなのかは実際に観ないとわかりにくいんですが、とにかく脚本が巧みで気付かないうちにこちらの見え方が操作されていたように思います。

ゲット・アウト」の脚本の凄さが

 

「先の読めない展開と物語終盤の衝撃的な展開、そして伏線の張り巡らせ方と回収の巧みさ」

 

にあるのなら、「スリー・ビルボード」の脚本の凄さは

 

「各登場人物それぞれを非常にリアリティのある存在として描き抜く力と、鑑賞者が登場人物に対して抱く印象の完璧かつ巧みな操作」

 

にあるのだと思います。

お話自体は決して生易しい話ではないので万人受けはしないでしょうが、ガツンと来ながらも鑑賞後に不思議な優しい余韻がある、とにかくめちゃくちゃ面白い映画です。

これまでは劇作家として名声を欲しいままにしてきた本作の監督・脚本を務めたマーティン・マクドナーですが、本作で映画監督としての名声も一気に手に入れて何だかすごいことになっています。

そんなマクドナーに我々からお祝いの意も込めて投げ銭しましょう。

というかこの映画は脚本や役者の演技合戦もさることながら演出も優れているので、観れば観るほど新しい発見があるんじゃないかと思います。一回観ただけじゃ全部汲みきれないぜマクドナー!

とりあえず「字幕版」で現代最高峰の演技合戦を味わわないといけないと思います。

 

DVD・ブルーレイは2018年6月2日発売らしいです。