ムービー興行収入ウォッチメン

国内外の映画の興行収入を勝手に見守り、必要とあらば勝手にお節介を焼いて応援するブログです。初めて来られた方は「はじめに」というカテゴリの用語説明を見てもらえると有難いです。

「モリーズ・ゲーム」の興行収入

ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー脚色賞を受賞した、いまハリウッドで最もノリにノッている天才脚本家アーロン・ソーキンの監督デビュー作「モリーズ・ゲーム」の興行収入を見ていきましょう。

 

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★基礎データ

製作費(推定):30億円

リクープする興行収入(=製作費×4):120億円

 

公開初週末の興行収入:6億8,000万円

予想興行収入(=公開初週末の興行収入÷12%):57億円

予想利益率:-52%

 

現在の興行収入:51億円

リクープまで:あと69億円

 

公開日数:74日

 

主演にジェシカ・チャステイン、共演に「個人的に上司にしたい、というか司令官にしたい俳優ナンバー1」のイドリス・エルバと「同じくナンバー2」のケビン・コスナーを迎えた実力者揃い踏みで、個人的には非常にワクワクする出演者のラインナップです。

とりあえずこちらの傑作映画「パシフィック・リム」を観れば「いかにイドリス・エルバに自分の上司、いや司令官になってほしいか」がわかると思いますのでリンクを貼っておきます。

 

 

 

そしてこちらも同じく「いかにケビン・コスナーに自分の上司になってほしいか」が一目しただけでわかる傑作映画「Hidden Figures(邦題:ドリーム)」です。

 

 

話がかなり脱線しましたが元に戻します。日本でも先週末から公開がスタートした「モリーズ・ゲーム」ですが、アメリカ本国では既に公開が終了しています。

公開日数は74日で、だいたいの映画の平均公開日数が116日ということを考えるとかなり短い期間の公開だったようです。

そしてその短い公開日数も相まって興行的にはかなりの苦戦を強いられている、というかもう興行だけではリクープはほとんど不可能な状況に追いやられています。

 

管理人は先日観てきて「アーロン・ソーキン作品の一貫したテーマであると思われる、人間の複雑さと多面性が上手く描けていて、非常に面白い」と感じたので、「なぜこんなに興行が上手く行っていないのだろう?」と思い、本作の監督のアーロン・ソーキンが脚本を担当した過去の映画の製作費と興行収入データを調べてみました。(詳しくはまた「研究企画」として改めて取り上げるつもりです。)

最初は「今までのアーロン・ソーキン映画の動員力と配給体制に対して製作費が高すぎたのではないか?」と考えていたのですが、結論から言えば「過去作の動員力と本作の配給体制を鑑みても本作の製作費は極端に的外れではなく、ある程度妥当な水準。想定外だったのは動員力の大幅下落。」ということでした。

どういうことかと言うと、過去作から算出されるアーロン・ソーキンの平均動員力は1館あたり545万円で、本作の配給体制を組み合わせると

 

予想興行収入:

545万円×1,708館=93億円

 

ということになります。

この93億円から逆算して製作費を考えると、

 

製作費上限:

93億円×25%=23億円

 

となります。

本作の製作費30億円と比較するとその差は7億円なので、そこまで極端に差がある訳ではありません。

ただリクープする興行収入に換算すると「製作費30億円・リクープ120億円」と「製作費23億円・リクープ93億円」には27億円の差が出るのでそういう意味では少しアテが外れているとも言えますが。

 

製作費がもし23億円だったらリクープに必要な興行収入は93億円なのですが、それにしたって現在の興行収入51億円はそのリクープの水準に遠く及んでいません。

これが一番の原因の「想定外だったアーロン・ソーキンの動員力の大幅な下落」です。

脚本を担当した作品と監督作を比較するのはフェアじゃない気はしますが話を進めると、過去に脚本を担当した作品の平均動員力は545万円だったのに対して、本作は290万円に留まっています。

これが興行面で一番痛かったものと思われます。

そもそもアーロン・ソーキン脚本の映画は批評家や映画好きの間では評価がメチャクチャ高いけど、興行面ではなんともビミョウな感じなのです。

 

アーロン・ソーキンが脚本を担当した映画のサマリー

平均製作費:45億円

平均興行収入:126億円

平均損益率:-30%

平均劇場数:2,322館

 

管理人も個人的に好きなアーロン・ソーキン脚本の映画ですが、興行面では平均-30%です。

しかしやたらと作品としての評価が高く、賞レースの常連であることからも配信やDVD・ブルーレイなどの売上で興行で足りなかった分をリカバーしているものと思われます。

モリーズ・ゲーム」がここまで興行で苦戦することは想定外でしたし、作品を鑑賞したあとも「なんでこんな程度の興行収入なんだろう?」と疑問符が付きまくりでしたが、結局のところ「アーロン・ソーキン」というブランドが訴求するのは一部の映画好きの層のみでそれ以外の興行収入を牽引する層には訴求しなかったからなのかなと漠然と思います。

とりあえず個人的には「モリーズ・ゲーム」は非常に面白いのでおすすめです!

気に入った人は興行面に目をやると心がささくれると思いますが、製作会社が興行以外の売上でものすごく頑張ってリカバーしてくれることを期待しましょう!

 

ちなみにアーロン・ソーキンが脚本を手掛けた映画の中で管理人が一番好きなのはブラピとジョナ・ヒルが出演している「マネー・ボール」です。

 

 

メジャーリーグのある球団についての映画なんですが全然派手でなくむしろすごーく地味な映画ですが、観終わったあとには静かな感動を覚え、上品な余韻を残す傑作です。

もちろん原作小説も非常に面白いのでおすすめです。